「無理なく、抵抗なく、自然体で」をモットーに1%節電運動をスタート Q:川越市が太陽光発電システム推進に取り組むきっかけとなった「1%節電運動」は、市長ご自身の発案だったそうですが、どういうところからこの運動を思いつかれたのですか? 舟橋:平成7年12月に高速増殖炉「もんじゅ」のナトリウム漏れ火災事故がありましたが、そのときに思いついたんです。電力消費量が増大すれば、発電設備を造らなければならない。それなのに、電気を使うだけ使っておいて、発電実験や発電所建設には反対、というのは、消費者のエゴではないのか、と。発電施設の安全性確保や新エネルギーの開発・促進にはそれなりの時間がかかります。だとしたら、我々消費者も節電に努力して、電力需要を少しでも減らし、エネルギー問題や環境問題を解決するための時間的な余裕をもたせられるように協力すべきだと考え、平成8年から市内に200以上ある全ての公共施設で節電運動を始めることにしたわけです。
Q:スタート当初、職員の皆さんの中にとまどいや抵抗感はありませんでしたか? 舟橋:不便になるんじゃないか、と思ったら、なかなか取り組めないものです。ですから目標は1%節電でいい、と。100回に1回、エレベーターを使わずに階段を利用するだけでいいんだ、こう説明したら、それならできそうだとみんな言いましたよ。「無理なく、抵抗なく、自然体で」。そして「みんなが公平に実行できること」を。長く続けるためにはこれが大切です。こうして昼休みの消灯や階段の利用促進などを1年続けた結果、電力使用量で5%、金額にして約5千万円を削減することができました。現在9年目に入っていますが、平成7年度と比較した7年間の累積では約5億8千万円の削減になっています。こうして節減できた経費を、市民の皆さんに還元しようということから、節電運動スタートの翌年、平成9年度より住宅用太陽光発電システムの補助事業を始めました。なんといっても、自分たちで「発電」できるのですから、既存エネルギーの使用量を減らすためにも、こんないいことはない。「省エネ」から「創エネ」への展開です。 導入宅では、使用電力量の約4割が太陽光発電でまかなわれている Q:新エネルギーの中でも太陽光発電を推進する理由は? 舟橋:まず、陽の当たるところどこにでも設置でき、平坦地が多い川越に適した新エネルギーであること。そして、設置者がエネルギーを創っているという実感を持ちやすいので、エネルギーを考える良いきっかけになり、省エネ効果も期待できること。設置単価は一般家庭にとっては高額なものですが、総合的に考えると、本市に適したものと考えました。 Q:具体的な補助金額などは? 舟橋:1kW当たり10万円(最高40万円)を補助することで始めました。15年度からは、より多くの市民要望に応えるために、それから、設置単価がやや下がってきたこともあって、1kW当たり7万円としています。「できる限り市民要望に応えるように」との方針により、申請者すべてに対応しています。ただ、どうしても予算が不足しがちで、平成14年度などは、7月時点で当初予算を超えた申請があったため、補正予算、予備費充用によりすべての市民要望に対応しました。事業費としては、平成9年度から15年度までの7年間で、約1億6千万円かけています。 Q:住宅用太陽光発電の導入成果について教えてください。 舟橋:平成15年度末で523件。合計で1,728kWのミニ発電所が市内に誕生しています。1件当たりの発電規模は3.3kW。また、アンケート結果から、1kW当たりの発電量は1年間で1,080kWhになっていますので、523件の太陽光発電により1年間でおよそ180万kWhの電力が発電できたことになります。これは、推定で600t以上の二酸化炭素を削減できる発電量に相当します。また、設置したお宅では、使用電力量の約4割を太陽光発電でまかなっています。 Q:設置者の反応や声はいかがですか? 舟橋:以前に、設置者の方に集まっていただいて「わたしの家は発電所」という座談会を開いたり、「省エネの鉄人」という省エネルギーコンクールを開催しました。そうした中にはいろいろな節電を工夫しながら、発電量と使用量をほぼ同じに保っているという方もいらっしゃった。「売電計を見るのが楽しみになった」「自分で作っている電気だと思うと無駄遣いしなくなった」といった声も多く聞きました。太陽光発電は、身近に関わりを持てる新エネルギーなので、省エネ意識向上への波及効果は非常に高いと思います。 Q:太陽光発電を推進している現場からの問題点は何かありますか? 舟橋:ひとつには設置価格差の問題があります。市内の家庭における設置単価は、補助開始当初は1kW当たり約110万円であり、年々低下して15年度には65万円程度になっていますが、最高価格と最低価格の差が約70万円と大きいので、補助募集パンフレットの表紙に価格の推移や平均規模を掲載して、設置希望者へお知らせしています。国としても補助事業の継続や余剰電力を売電する際の買い取り価格の誘導など、太陽光発電の普及・啓発にもっと力を注いで頂きたい。また、太陽光発電システムは、まだまだ価格が高く、今後さらに普及させるためには、設置費の低価格化が必要であり、コストダウンのための技術開発をメーカーには期待したい。さらに、長期的視野に立つと、システムを廃棄する段階のリサイクル技術など、製造から廃棄までのライフサイクルを考えた対策も必要と思われます。
市内の学校すべてに太陽光発電導入を決定 Q:同時に、公共施設への太陽光発電導入も積極的に推進されていますね。 舟橋:節電運動を始めた頃、地元の商店会の皆さんが「市役所が頑張っているんだから、自分たちも協力しよう」ということで、手作りのポスターやビラを配って、一緒に取り組んでくれ まして。ですから、太陽光発電推進も役所がまず模範を示すことだと考え、平成9年に市役所の屋上に太陽光発電を設置して、それにより充電した電気自転車の活用を始めました。次に取り組んだのが学校です。環境教育上からも、次の世代の子供たちにより良い環境を引き継いでいきたいということからも、絶対に必要だと考え、建て替えを予定している1校を除く市内の全小中学校(54校)と養護学校に太陽光発電を導入済みです。そして、子供たちが毎日の発電量を見ることができるように校舎入口には表示パネルを設置しています。また、新設の公共施設にはすべて導入する方針で進めています。 Q:公共施設全体ではどのくらい導入が進んでいますか? 舟橋:平成15年度末で、72の公共施設に617kWの太陽光発電システムを導入済みです。これにより、年間約62万kWhの電力が発電され、約222tの二酸化炭素の排出が削減できると考えられます。また、施設の使用電力量に占める太陽光発電の割合は平均で4.5%(平成14年度・39施設の実績)になります。高いものでは霞ヶ関北出張所(20kW)が52%、今成保育園(15kW)が50%になっています。最近導入した施設では、北部地域ふれあいセンター(100kW)の半年間の実績によると、約190%となっています。総合しますと、200以上ある全公共施設で使用する電力量に対しては、約0.6%を太陽光発電でまかなっていることになります。費用的には、平成9年度から15年度までの7年間で、72施設に約8億7千万円の事業費をかけています。このうち、NEDO等から約4億1千万円の補助を受けています。
次世代への負担を小さくするためにも、新エネルギー導入は必要 Q:「省エネ」と「新エネ」の自然な結びつきが川越の特徴といえますね。 舟橋:これは並行してやっていかなければならないことです。そして全国的にもっともっと新エネルギーを導入すべきだと思います。たとえば今後発電所を壊す、原料などを廃棄するとな った場合、その処理はすべて次世代が負うわけです。新エネルギーを増やすことで、発電所を造らずにすめば、次世代の負担を減らすことができます。こうしたことから、平成10年7月に全国60自治体の賛同を得て「節電(省エネ)・新エネルギー自治体サミット」を川越で開催し ました。全国から20数名の首長さんがたが集まってくれまして、新エネルギー施策や導入事例についての情報を交換しあいました。風力発電、ごみ焼却発電など地域それぞれの取り組みが大変参考になりました。その時に私は「百の議論より一つの行動を起こすきっかけをみんなで広げていきましょう」とお話しさせていただきました。きっかけがあって、何か一つ行動を起こすことができれば、いろんな活動が次々と生まれてくるものなのです。 Q:川越ではどうような活動の広がりがありましたか? 舟橋:たとえば自動車の排気ガス問題への取り組みがあります。市役所では、天然ガス車を22台導入し、ごみ収集車については買い換えに併せて天然ガス車にする方針で推進しています。また太陽光発電により充電した電気自転車30台を近場の出張時に活用したり、パーク・アンド・ライドの実験なども行っています。市民に向けては、電力使用量や電気代がリアルタイムでわかる省エネナビなどを貸し出して、使用電力量を意識しながら省エネに取り組んで頂いた家庭を「エコチャレンジファミリー」として認定する事業や、環境にやさしい学校づくりをしている学校を「エコチャレンジスクール」に認定する事業を15年度から始めており、市民の取り組みへと広げていきたいと思っています。また、環境問題を市民、事業者、民間団体、行政で協働して取り組む組織として「かわごえ環境ネット」が設立され活発な活動がされています。
事業所へも太陽光発電導入を推進し、川越全体の取り組みに育てたい Q:今後はどのような展開をお考えですか? 舟橋:太陽光発電システムを事業所へも波及させていきたいと思っています。最近、活発な動きがみられる家庭用燃料電池も動向を見ながら推進していきたい。省エネについても、節電に取り組むお宅は「節電所」とも言われ、発電所と同様な役割があることから、市民・事業者の取り組みを促進し、川越全体の取り組みとしていき、省エネと創エネで地球温暖化問題に取り組んでいきたい。昨年、首都圏を中心に太陽光発電をお宅に設置した人の集まりである「太陽光発電所ネットワーク」が組織され、市民レベルでも太陽光発電の取り組みの輪がひろがりつつあります。市内の設置者も推進役の一人として積極的に活動していることもあり、この団体の今後の活動を期待しています。 Q:これから新エネルギーと取り組んでいこうとする自治体に向けて、メッセージをお願いします。 舟橋:最初から無理な目標ではなく、誰でもがやる気を起こせる目標の設定がやはり大切だと思います。そして、達成感を得ながらプラス1の発想で一つ一つできることから次に展開していけば良いと思います。省エネにしても新エネにしても地球温暖化対策は、長期にわたる地道な取り組みが必要であり、試行錯誤しながら各自治体に合った事業を進めていけば良いと考えます。