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導入事例《NPOなど団体》
市民協働発電所の設置(ソフトエネルギープロジェクト/神奈川県横浜市)
生活者こそ、エネルギーや環境問題解決の担い手。その思いと行動力が、県や企業を動かし、地域を変える。
■活動テーマ 横浜市を中心として神奈川県内外に対して、ソフトエネルギー、省エネルギーの推進に関する事業を行い、温暖化防止に向けて二酸化炭素削減に寄与し地球環境の保全を図る。
■主な活動 市民共同発電所の設置(現在5基)及び地球温暖化対策地域学習センターの設置(現在2基)、環境教育車NEOを使った体験型環境教育活動、市民・行政・企業イベントへの参加を通した新エネルギー・省エネルギーの普及啓発活動。新エネルギーのアドバイス・コーディネート。
■実施場所 横浜市中区真砂町木下商事ビル8階
■連絡先 TEL :045-681-3829
FAX:045-681-3934
E-mail:npo-sep@yk.netlaputa.ne.jp
■ホームページ http://www.k5.dion.ne.jp/~npo-sep/
●インタビュー協力: 特定非営利活動法人ソフトエネルギープロジェクト理事長 佐藤一子さん
(本文中では敬称を略させていただきました)
特定非営利活動法人 ソフトエネルギー プロジェクト
理事長 佐藤一子さん

横浜とドイツの市民団体が、私の意識を大きく変えた。

Q:もともと市民運動や環境活動に関心があったのですか?

佐藤:1983年頃でしたか、安全な食べものを共同購入している生活クラブ生協神奈川という団体に入会しました。といっても、ことさら食べものや環境に対する関心が高かったわけではなくて、子供が幼稚園に入るから、という単純なきっかけでした。そこでたまたま委員長をやることになり、いろいろと勉強する機会に恵まれたことから、人生が激変しました。(笑)まず関心を持ったのが水の問題。流域下水道とか琵琶湖のあおこの大量発生問題とか。そして、リサイクルです。地元の企業とタイアップして空き缶回収運動をしたりしました。とにかく、何か解決したい問題があったら、国や行政に文句を言う前に、それを自分たちのできる範囲で担っていく。これは今も私の活動の基本なのですが、こうした姿勢や方法論を生活クラブから教わりましたね。
もうひとつ、生活クラブ時代にドイツの市民団体の人たちと交流する機会が持てたことも、大きな意識改革になりました。日本に招いたり、ドイツへ出かけたりして、何十回も意見交換をしました。そんな中から学んだのは、実践することの大切さです。ドイツの緑の党のオフィスで夜まで討論会をしたとき、彼らはオフィスの討論をしている場所だけの電気しかつけない。街にはリサイクルボックスが普通にあって、当然のように利用されている。自分の家の庭の木を切るにも、近隣の景観を考えてみんなと相談する。理論だけじゃなく、行動がともなっているんですね。また、生まれたときからこういう環境の中で育つことは、子供にとって最良の環境教育になります。学校で教えるだけが教育じゃないことを教えられました。

Q:新エネルギーに出会ったのは、いつごろでしたか?

佐藤:環境にやさしいエネルギーがあるらしい、風や太陽の光がエネルギーに変わるらしい・・・最初はそんなレベルでした。ちょうどその頃ブラジルで地球サミット(92年)があって、その報道から、私たちの住んでいる神奈川県が、スエーデン1国に匹敵する量のエネルギーを毎年消費しているということを知りました。これにはすごくショックを受けまして。ただ、そのとき思ったのは、環境問題というのはかけ声やお題目だけじゃだめで、市民生活や企業活動など地域の主体が変わらなければ解決しないだろう、ということでした。そうしましたら翌年、神奈川県が県としての温暖化防止行動目標を定めたローカルアジェンダ(「アジェンダ21かながわ」)を発行しました。だったら、環境にやさしい新エネルギーというものを使って何かできるんじゃないか、そう考えて県にお話しを伺いに行き、アジェンダの中にある市民の役割を私たちが担います、ということで、自然エネルギーに関心を持っていた生活クラブの女性5名でこの会を立ち上げたんです。

ソフトエネルギープロジェクトの事務所内に開設された「体験・研修センター」。体験しながら学べる自然エネルギー,省エネルギー60種類程の機器が展示され、20名程度の人材育成も実施できる。

大切なのは行動すること。そのために企業や行政との協業を思いついた。

Q:まずどんな活動から始められましたか?

佐藤:1年くらいは学習会中心の活動でしたが、大切なのは行動すること。学習会だけでは行動につながりません。行動するには機材がいる。じゃあ、とにかく太陽光パネルを買ってみよう、と。ただ当時は55ワットのパネル1枚が10万円もしました。横浜市にお願いして、5万円の補助をもらい、残りは自分たちでお金を出し合って、まず1枚を買いました。そこからまた1枚、2枚とこつこつパネルを買い足していきましたが、活動に足る枚数にはなかなかとどかない。そこで企業さんに協力をお願いしてみました。「機材持ち込みでイベントに参加してください。展示して説明もしてください。でもお金は払えませんよ」って。逆に企業さんから参加費を頂戴したり。今思うと恐ろしくなりますが(笑)。とにかく実践・行動のために、企業、行政、関連団体、学者さん、それこそ様々な方達に一緒に活動していただきました。

Q:当時としては、市民団体と企業が協働すること自体、珍しかったのでは?

佐藤:企業を呼んでくる事は普通はなかったし、こっちを向いてくれる企業も少なかった。でも行動できなければ、それこそ意味がないじゃないですか。機材も、皆さんから提供していただいたりしながら、どんどん充実していきました。太陽光発電パネルをはじめ、ソーラーカーや風力発電機など。こういう機材を使って市民・自治体・企業などのイベントに参加したり、学校などへ新エネルギーや省エネルギーの普及啓発・環境教育に出向いたりといった活動を現在も続けています。ただ、このように機材やイベントや活動の規模が大きくなってくると、やはり契約とか責任の問題が出てきます。ボランタリな市民活動なんだから…という考えは通りません。事実、ハードの設置などには法人格が条件になる場合も少なくない。任意の団体では限界があります。その意味で98年のNPO法施行はありがたかったですね。99年に法人格を取得した翌年、市民共同発電所第1号機を設置しました。

共同発電所の第3号となった富士見丘学園市民共同発電所。正門横には太陽光発電量の表示板が設置されている。(写真提供:ソフトエネルギープロジェクト)

市民共同発電所の設置から、地域の環境学習拠点づくりへ

Q:市民共同発電所とはどういうものですか?

佐藤:新エネルギーを使ってみたい、温暖化防止に貢献したいと思っても、個人ではなかなかむつかしい。そういう人たちが共同で発電システムを購入し、それをできれば公共的な施設などに設置してもらうことで、多くの人に見てもらったり、子供の環境教育に役立てたりしよう、という活動です。現在は5基の様々な共同発電所を、市内の幼稚園、保育園、公園、そして高校に設置しています。また,企業のご協力を得て倉庫の屋上を借りた設置もしています。資金は、国、県や市また企業さんからの補助や助成、そして「クリーンエネルギー市民共同発電所設置基金」を設立して、市民の皆さんからの賛同金(年間1口¥6,000)を募っています。

Q:他にはどのような活動をされていますか?

佐藤:15年度からは神奈川県との協働事業を開始しました.1つは、[地球温暖化対策地域学習センター]として、公立の小学校,高校に太陽光発電の設置を進めています。また、自動車メーカーさんなどに助成・協力いただいて環境教育体験車「NEO(ネオ)」という超低排出ガス車を共同開発しました。屋根には太陽光パネル、後のドアには風車が取り付けられていて、これで発電した電力でパソコンを動かして温暖化の映像学習をしたり、家電製品を動かして消費電力、待機電力の測定をしたりできます。他にもご飯を炊いたりポップコーンが作れるソーラークッカー(5台)や、試乗体験ができる小型ソーラーカーなど、いろんな機材を積み込めるので、どこへでも出かけていって、その場で体験学習が行えるようになっています。また、自然エネルギーや省エネルギーの機器を見て触れて体験してもらえる場として「自然エネルギー・省エネルギー普及啓発環境教育推進センター」を開設しています。(設備詳細はこちら)更に,事務所に併設して、自然エネルギー、省エネルギー60種類程の機器を常設し、20名程度の人材育成も実施できる体験・研修センターも開設しました。ここは駅からも近く、また常駐しておりますので、学校の体験学習、NPOや自治体、企業等の人材育成の場としても最適です。

Q:現在進行中の活動や今後の計画としては?

佐藤:上記で触れました神奈川県との協働事業「地球温暖化対策地域学習センター」の一つとして、小田原市の小学校の屋上に太陽光発電システムを設置しました。これは、公立の小学校の施設内にソフトエネルギーという外部の設備を置くという新しい枠組みの事業です。神奈川県との協働事業ですが、小田原市・環境保全課と連携して教育委員会にお願いし、そこから設置可能な学校を調整いただきました。CO2の削減はもちろんですが、ここを拠点に環境教育を広げて行ければと思っています。もうひとつは地域学習センター2号機として三浦市の県立三浦臨海高校に太陽光発電システムを設置するという事業。もともと新エネルギーや環境教育に協力して何度か授業に行っていた高校ですが、PTAの積立金を使ってぜひ太陽光発電を設置したいと相談を受けました。でもあまり前例が無く、教育委員会から了解を頂くのはすぐには難しかったですね。結果として、PTAのお金ではなく、神奈川県との協働事業として、教育委員会のご了解も頂きました。協働事業の県担当課が調整をしてくれた力は大きかったと思います。

Q:これも共同発電所の一環ですか?

佐藤:そうです。市民共同発電所を発展させて地球温暖化対策の拠点、環境教育の拠点という目的をより明確に打ち出しました。その意味では、新しい役割の事業と位置づけていいかもしれません。ある大学の先生に『君たちの共同発電所は評価する。でも3年経って同じことをやっていたら、それは評価できないよ』とアドバイスを頂きました。確かにそうなんですよ。だから、3年を目途に、何かひとつでもレベルアップしていけるように頑張っています。これからやってみたいことは、共同発電所で作ったクリーンエネルギーを供給する側になる、ということ。系統や送電や様々な問題はあるでしょうが、やってみたいですね。

  環境教育体験車『NEO』。搭載された太陽光パネルと風力発電機は会員からの寄付によるもの。(写真提供:ソフトエネルギープロジェクト)
自然エネルギー・省エネルギー普及啓発環境教育推進センター(写真提供:ソフトエネルギープロジェクト)

互いの組織やしくみの違いを理解しあうことが、協働への第一歩。

Q:佐藤さんは神奈川県と一緒にNPOのための協働の手引き書を作られたとお聞きしていますが、NPOが協働をうまく行うコツとは何でしょうか?

佐藤:先ほどお話しした三浦市の高校の例でいいますと、教育委員会との交渉に2年ほどかかっています。最初の1年は高校と一緒に環境教育を行い、まず実績を作る。翌年それを持ってお願いに行ったわけですが、前例が無く難しかったですね。計画としてはその年度の事業だったんですが、1年待つことにしました。結果的には時間をおいたことが良かったですね。100を求めて100失うよりは、20でも30でも前進した方がずっといい。壁にぶつかっても、焦らず気長にかまえることです。それと、行政とNPOでは組織もルールも違います。県の事業というのは、まず部内で予算をとって、議会の承認を得て、やっと翌年実現できるもの。そうした事情というか、しくみの違いというのを理解しあっていかないと、いい協働にはならないと思います。企業との協働でもこれは同じですよね。

Q:では、個人や仲間内で、何か新エネルギー普及に役立つことをやってみたいという人たちに、いい活動のヒントはありますか?

佐藤:いちばんおすすめしたいのは、何人か仲間を募って共同発電所を作ってみること。小規模で良いと思います。作ることによって様々なノウハウが身についてきます。すると今度は人に説明できるようになり、さらに学ぶようになる。自分たちの拠点を持つことで、きっと活動が開けてきます。それが無理なら、いま自治体が様々な場所に太陽光をつけはじめていますから、そういう場所を利用させてもらって学習会を開くとか。あとは、地域で既に活動している団体やNPOを探して一緒に活動してみるのもいいですね。ソフトエネルギープロジェクトでも常時、会員や体験学習を手伝ってくれるボランティア、それに共同発電所設置基金を募集していますので、活動したい人はぜひ利用してください。

Q:最後に、このほど新エネ大賞を受賞されたわけですが、ご感想をお願いします。

佐藤:これは本当に嬉しいです。というのも、ソフトエネルギープロジェクトを立ち上げた当初、いちばん親身に相談に乗ってくれたのが『新エネルギー財団』さんだったんですよ。知識も何もない私たちに、シンポジウムを見学させてくださったり、パンフレットを提供してくださったり。それから11年経って、今こういう素晴らしい賞をいただいた。これはものすごく嬉しいことです。受賞を励みとして、さらに地球温暖化防止、自然エネルギー、省エネルギーの普及啓発、環境教育の推進に更に努力をしていきたいと思います。

三浦臨海高校に誕生した地域学習センター第2号の完成式。発電施設の説明は生徒たちが担っていく。(写真提供:ソフトエネルギープロジェクト)

本文に登場した各団体のホームページ
NPO法人ソフトエネルギープロジェクト
神奈川県 環境計画課


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