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目次
1.葛巻町とは
2.新エネルギーへの取り組み
3.Back stage Interview
陸の孤島から、年間交流人口50万人の町に
葛巻町環境エネルギー政策課 下天广浩氏
新エネルギー×第三セクターの相乗効果
葛巻町長 中村哲雄氏
4.葛巻は自然エネルギーの博物館
5.主な施設の概要
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1.葛巻町とは
葛巻町は、岩手県北部、県都盛岡市から北東に70kmの北上高地に位置し、周囲を標高1000m級の山々に囲まれた自然豊かな町。北緯40度、434.99平方kmある町の面積の97%が標高400m以上の高地にあり、町の86%は森林で占められています。高標高地に位置しているため内陸型で寒暖の差が大きく、夏季南風、冬季西風で、冷涼で雨が少ない、さわやかな気候が特徴です。
このような気候風土から、葛巻町では明治25(1892)年に乳牛が導入されて以来、それまでの林業に加え酪農が基幹産業の一つとなり、さらに昭和50(1975)年、大型の畜産団地づくりを目ざす国のプロジェクト「北上山系開発事業」が開始され、高原に大規模な草地が造成されたことを契機に、酪農経営の規模が拡大。現在、約8700人の人口に対し、乳牛が約1万3600頭、牛乳の生産日量も120トンを超える「東北一の酪農の町」になっています。
また、昭和61(1986)年には林業の特別な産品である山ブドウでワインを醸造する計画が立ち上がり、ワイン工場を建設。研究と試作を繰り返した末、近年では国産ワインコンクールの銅賞を受賞するほど高品質に。首都圏への出荷量も年々増えています。
2.新エネルギーへの取り組み
- 1988年
- 「森の館ウッディ」にペレットボイラーを導入
- 1995年
- 町の環境保護条例を策定
- 1999年
- くずまき新エネルギー宣言
袖山高原風力発電所が本格稼動
町役場でハイブリッドカーを導入
- 2000年
- 葛巻中学校に太陽光発電システムを導入
環境エネルギー政策課を新設
畜産バイオマス発電システム
- 2001年
- 地球温暖化防止等率先実行計画を策定
環境情報誌「エコねっと」創刊
七滝にマイクロ水力発電を設置、ライトアップに利用
- 2003年
- 新エネルギー導入事業費補助金制度開始
畜産バイオマス発電システム施設を整備・稼動
グリーンパワーくずまき風力発電所が本格稼動
グリーンステージにいわて型ペレットストーブ導入
介護老健「アットホームくずまき」にペレットボイラーと太陽光発電を導入
自治体環境グランプリ等6大賞受賞
- 2001年度〜2003年度
- 葛巻小が省エネルギー教育推進モデル校の指定を受ける
- 2004年
- 省エネルギービジョンを策定
環境、文部科学、内閣府 特命大臣表彰
日本ファッション協会クリエイションズ大賞 まちづくり創造賞受賞
- 2005年
- 木質バイオマス発電所施設を建設
「平成17年度第10回新エネ大賞新エネルギー庁長官賞」受賞
3.Back Stage Interview
陸の孤島から、年間交流人口50万人の町に
葛巻町環境エネルギー政策課 下天广浩氏
葛巻町は日本に存在する新エネルギー施設がほとんど視察見学できる町です。過去には陸の孤島などと揶揄された時代もありましたが、昨年は私たち環境エネルギー政策課のスタッフが案内した視察だけでも約300団体6000人ぐらい。また、観光やビジネスなども含めた年間の交流人口は約50万人にもなっています。「くずまき新エネルギー宣言」を作成した1999年の交流人口が15万人弱ですから、ここ数年でその数が急激に増えていることがわかります。
新エネルギーがもたらす経済効果についても、財団法人社会経済生産性本部に調査を依頼したところ、2004年時点で12億円という数字が出ました。牧場で牛の乳搾りやアイスクリーム造りを楽しみ、焼肉を食べて、お腹がいっぱいになったら散策がてら風車を見て……と。大人の方であれば、帰りにチーズをつまみにワインを飲んでから帰るという楽しみ方もできますし。ちょうどいい具合に葛巻町で1日楽しめるよう繋がっていることで、こうした良い結果が生まれているのでしょう。
今ではこの町の取り組みが周囲から評価されるようになり、町長をはじめ私たちも講演やシンポジウムのパネラーとしてお話させていただく機会が増えました。私たちの経験やノウハウを少しでも役立ててもらえたらうれしいですね。でも、一番大切なのは、町民の皆さんの理解です。こうした取り組みが、町そして町民の皆さんのためになることを積極的にアピールして、しっかり理解を得られるよう努めていかなければいけません。
そうした中では子供たちへの働きかけも重要です。葛巻町では小学校3年生になると社会科見学で町内にある新エネルギー施設を回りますが、これが“気づき”につながることも多いようです。実際、私が所用で学校へ出向いた時にも、教室を最後に出る子が電気を消したり、暖房中はきちんとドアを閉めるだとか、当たり前かもしれませんが、そうした省エネ意識はきちんと身に付いているようでした。やはり、子供が動けばその家庭も動きますし、親や大人に対する影響も非常に大きい。そうした意味では、町の省エネのリーダーは子供達と言えるかもしれませんね。
新エネルギー×第三セクターの相乗効果
葛巻町長 中村哲雄氏
現在の葛巻町の姿は、先代の人々が行ってきたことがすべて足し算になった結果です。例えば30年前、国のプロジェクトであった「北上山系開発事業」により葛巻町でも1000mの山を結ぶ舗装道路ができました。袖山高原や上外川高原に風力発電施設を作るためには、そこにいい風が吹いていることはもちろんですが、風車の羽を運ぶいい道路が通っていることや、起した電気を送る電線につなげられるといった条件も必要になるのです。これだけではありませんが、このように歴代の町長と町民が、この町の抱える課題に真摯に取り組んできたことが、ここへ来て一気に足し算されたと思っています。
また、葛巻町は第三セクターが非常に元気な町でもあります。くずまき牧場は創業から30年、くずまきワインは20年、グリーンステージは12年目になりますが、多くの特産品を開発し、地域の経済活性化、雇用拡大、若者の定着に大きく貢献しており、これに関する視察者も年々多くなっています。つまり、第三セクターの視察に訪れると新エネルギー施設があり、新エネルギーの視察に訪れると元気の良い黒字の第三セクターがあるわけです。どちらも相乗効果を上げて町の活性化に繋がっています。
今後の課題としては、風力発電の売電単価が非常に安くなるという問題が上げられると思います。袖山高原に風力発電機が建った1999年の売電単価は確か1kW当たり11円50銭でしたが、2003年に上外川高原に12本建った時には9円台で、最近では6〜7円台です。さらに今後新たに建設する場合、購入側の電力会社が必要のない時は一方的に切断する「解列」という方法での取引も検討されています。葛巻町にはまだ風力発電施設を2ヶ所80基建設できる可能性があり、これからも大いに「クリーンエネルギーのまち」を発展させるつもりですが、電力会社のこうした対応では非常に厳しいです。こうした問題を改善するためにも、国にはさらなるリーダーシップを発揮していただきたいと考えています。
4.葛巻は自然エネルギーの博物館
「エネルギー自給100%まち」を目指し、1999年、袖山高原牧場に風力発電3基を建設したのを皮切りに、太陽光発電、小水力発電、家畜の糞尿を利用した畜産バイオマス発電、木質バイオマス発電と、自然エネルギーを活用した発電能力を次々に備えてきた葛巻町。現在、町全体のエネルギー使用量は約1670億kcal/年。これに対し、自然エネルギー供給量は約1300億kcal/年で、町のエネルギー自給率は78%になっています。
そんな葛巻町は、町全体がまるごとクリーンエネルギー発電の博物館のよう。館内のみどころスポットも年々増えています。
※葛巻町新エネルギーマップのダウンロードはこちら。
5.主な施設の概要
袖山高原風力発電所(1200kW)[運営:エコワールドくずまき風力発電(株)]
町の新エネルギー導入プロジェクトの第1弾として1999年6月、袖山高原に完成した3基の風車を擁する風力発電施設。標高1000mを越える山間高冷地で導入された世界最初の風車でもあり、現在では葛巻町のシンボル的存在になっている。出力は1基400kW。3基合わせての年間発電量は約200万kWhで、一般家庭の消費電力約600世帯分に相当する。これは環境保全効果で見ると、原油換算で200キロリットル(18リットル灯油缶で1万700缶)、二酸化炭素で200トンの削減に寄与する数値。建設費は3億4000万円(NEDOが50%補助)。
上外川高原風力発電所(2万1000kW)[運営:(株)グリーンパワーくずまき]
町南部の上外川高原牧場で2003年12月に運転を開始した大規模風力発電施設。標高1000mを超える上外川高原に、約4kmにわたり12基の風車が並ぶ。風車はいずれも、高さ60m、翼の直径が66mもあり世界最大級。出力は1基1750kW。12基合わせての年間発電量は5400万kWhで一般家庭の1万6000世帯分と、この風力発電施設だけで町の年間消費電力量の2倍相当の電力を賄える計算になる。自然と人間の共生モデルウィンドファームとして、また町の観光拠点としても注目を集めている。建設費は47億円(経済産業省が30%補助)。
バイオガスシステム(くずまき高原牧場)(37kW)[運営:葛巻町]
町内の牧場から回収された乳牛の糞尿13トン(200頭分)と町内の生ゴミ1トンを原料にメタン発酵させ、回収したメタンガスによりコジェネユニットで電気・熱を得るシステム。発電した37kWの電気と熱エネルギー(余熱)は本施設の建つくずまき牧場内で利用し、残る液肥は農地に還元している。2004年11月から一定規模の畜産農家に家畜排泄物処理法が義務付けられたこともあり、今後は酪農家への普及にも期待がかかる。建設費は約2億2000万円(国が50%補助)。
葛巻町立葛巻中学校太陽光発電設備(50kW)
葛巻中学校の校舎全面改築に合わせてグラウンドの南端に太陽電池モジュール420枚を設置したもので、パネルの総面積は413平方m、発電出力も50kWと県内最大の誇る。稼動は2000年3月からだが、天気が良ければ校内で昼間に消費される電力のすべてを賄うことが可能。平均でも同校の使用電気量の25%を賄っている。校内には発電量が一目でわかる掲示板も設置され、生徒の新エネルギーや地球環境保全の重要性への意識向上にも役立っている。建設費用4500万円(エコスクール指定承認を受けたため、NEDOが50%補助)。
木質バイオマスガス化実証プラント(120kW)[運営:月島機械(株)]
環境装置メーカである月島機械(株)とNEDOが共同出資で、2007年度まで実施する木質バイオマス実証試験のための施設。2005年にくずまき高原牧場内に建設された。この試験では町内の製材所から購入した木材チップをガス化炉で蒸し焼きにし発生した一酸化炭素やメタン、水素から発電。作られた電気は牧場内の宿泊施設や乳製品加工施設へ供給している。3トンの木材チップをガス化し、1時間当たりの発電量は120kW。1日15時間稼動した場合の年間発電量は一般家庭180世帯分の年間消費電力量に相当する。
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