1.伊方町とは
伊方町は、四国の最西端から九州に向かって伸びる“日本一細長い”佐田岬半島のほぼ全体を占める町。平成17年4月、半島の先端部・中央部・基部に位置する三崎・瀬戸・伊方の3町が合併し発足しました。現在の町の人口は約1万2000人。
半島を挟んで南側は宇和海、北側は伊予灘に面しているこの土地は、年間平均気温16〜17℃の温暖な海洋性気候ですが、半島の背骨部分に200〜300m級の低い山並みが走っているため、94.36平方kmの町面積のほとんどは急傾斜地です。主産業は、こうした気候風土を利用した段々畑による柑橘栽培を中心とした農業と沿岸漁業で、特に佐田岬と九州の間にある豊予海峡で捕れたアジやサバは「岬(はな)アジ・岬サバ」として全国に広く売り出されています。
伊方町には四国で唯一の原子力発電所があり、四国の電力消費量の約40%をまかなっていますが、近年では、国内でも有数といわれる風の強さを活用した風力発電への取り組みも積極的に行っています。
2.新エネルギーへの取り組み
- 1991年
- 道の駅「瀬戸農業公園」に実用型風車を設置(旧・瀬戸町)
- 2000年
- 旧・瀬戸町が風力発電を中心とした地域新エネルギービジョンを策定
- 2002年
- 旧・伊方町が風力発電を中心とした地域新エネルギービジョンを策定
- 2003年
- 「瀬戸ウィンドヒル発電所」が運転開始(旧・瀬戸町)
- 旧・三崎町が風力発電を中心とした地域新エネルギービジョンを策定
- 2005年
- 三崎・瀬戸・伊方の3町が合併し新たな「伊方町」となる
- 「伊方風力発電所」が運転開始
3.Back Stage Interview
半島を渡る風を町づくりにいかして
伊方町政策推進課 特定事業課長 近田三郎氏
●風の町で動き始めた新たな活動
三崎・瀬戸・伊方の旧3町は、自然環境や風況がよく似ています。2005年の合併以前に、3町それぞれで新エネルギービジョンを策定していましたが、内容は「地域の活性化と一体になった風力エネルギーの導入」と一致していたので、合併により新エネルギー導入促進が後退する心配は全くありませんでした。旧伊方町には四国唯一の原子力発電所もあることから、これに風力発電が加われば、伊方町は“四国のエネルギー半島”になる。そういう意味では、この合併でかえって弾みがついたと言えるかもしれません。
この半島で風力発電が推進されるきっかけとなったは、1991年「瀬戸農業公園」に設置された1基の風車でした。定格出力100 kWのこの風車は、自治体が設置した全国初の実用型風車として注目を集め、稼働率も期待通りの成果を上げました。この好結果が後の事業化につながったのです。当時の瀬戸町民の方々も、当初は風車を見ても「あれは何じゃ?」という反応でしたが、徐々に我が町のシンボルとして受け止めてくれるようになり、その後、半島の尾根上に11基の風車が並ぶ「瀬戸ウィンドヒル発電所」を立ち上げる際にはすんなり受け入れてもらえました。
今現在、町で稼動している風力発電所は2ヶ所ですが、建設中のものが4ヶ所あり、これに2004年の台風で破損し再建予定になっている瀬戸農業公園の風車を合わせると、数年後、伊方町は60基もの風車が立ち並ぶ全国有数の“風の町”になります。
環境学習素材になる風車と、素晴らしい景観と、海の幸などの豊かな食。こうした佐田岬半島ならではの特色をいかした体験旅行型の交流促進を推進しようと、現在、地域の業者さんが集まって「佐田岬ツーリズム協会」というNPO法人の立ち上げ準備を進めています。これまでは観光も町主導で行ってきましたが、風力発電をきっかけに、こうした新たな活動も立ち上ってきた。今後もいろいろなかたちで風力発電施設を活用してもらえたら嬉しいですね。
●環境影響評価の難しさ
これまで視察や施設見学に大勢の方々に来ていただきました。そこでよく聞かれる項目としては、一般の見学なら、環境保全への貢献内容や風車の仕組みなど。自治体関係者の視察なら、補助金申請も含めた立ち上げの手法やクリアしなければいけない課題や問題点などです。
クリアすべき課題は地域によっても異なりますが、最近では野生生物の保護や景観の保全など風力発電と自然保護の関係が大きなテーマになっています。たとえば国立・国定公園内への風車設置のあり方が、産・官・学で幅広く議論され、山稜線を分断して眺望に支障を及ぼしてはいけないなどの規制も生まれていますし、瀬戸ウィンドヒル発電所に関しては、設置場所が鳥類の渡りのルートに当たっているという問題もありました。
風況のいい所というのは、どうしても景勝地や野生生物の生息地等と重なってしまうことが多いので、事前に十分な調査が必要になります。瀬戸ウィンドヒル発電所では風車設置前の環境影響調査に加えて、風車設置後も一定期間鳥類の渡りに与える影響を追跡調査しましたが、総体的に風力発電が生態系に与える影響についてはまだまだデータの蓄積が少ないといわれており、このあたりが難しい問題だと思います。
●太陽光導入でさらなる事業展開を
売電単価も経営側にとっては深刻な問題です。現在、売電価格は事業者と電力会社の相対協議で決められていますが、どうしても買い取ってもらう事業者側の立場が弱いように感じます。そのため今は非常に厳しい状況。現在稼動中の瀬戸ウィンドヒル発電所を例にとると、年間予想発電量が約3000万kwhですから、売電単価1円につき収入額が3000万円ぐらい違ってくるので非常に大きい。
たしかに風力は電源が安定していない面がありますが、新エネルギー導入の公益性を考えるともう、もう少し高くならないものかと思います。風力の先進国では国全体で事業を支える仕組みが進められていると聞きます。わが国でも事業支援制度は年々充実していますが、いろんな面でもう少し事業者と電力会社の間に入っていただけるようお願いしたいと思います。
このように課題や問題点もありますが、風力発電を始めたことのプラス面の非常に大きなものです。そのなかでも一つ挙げるとすれば、故郷を語るシンボルができたということ。これまでは、松山市などで瀬戸町(合併前)と言っても「それはどこ?」という感じでしたが、今は「あの風車のある町ね」とすぐに分かってもらえます。こんな小さな町で、これだけ大きな施設を設置することができたことに自信や誇りを感じてくださっている方も多いようです。今後は、公共施設を中心に太陽光発電も導入して、さらなる事業展開を図っていきたいと思います。
4.伊方町の風力発電マップ
5.主な施設の概要
道の駅・瀬戸農業公園
1991年、瀬戸農業公園の整備に伴い、公園内の施設に電力を供給する目的で設置された風力発電施設。この時設置されたのは、高さ30m、翼長14m、定格出力100kWの風車が1基で、自治体が設置した日本初の実用型風車として注目を浴びた。当時は売電制度がなかったため売電装置のつかない自家消費型で、余剰電力は捨てられていたという。2004年8月の台風16号により翼を破損し、昨年5月に撤去作業が行われた。現在、再建計画が進められている。
瀬戸ウィンドヒル発電所(1万1000kW)
佐田岬半島の中央部の尾根で、2003年10月に運転を開始した大規模風力発電施設。標高330m、県立自然公園の権現山からデッカ高原の間約1.6kmに渡って、11基の風車が立ち並ぶ。風車はいずれも、高さ50m、翼長29.5m、定格出力1000kwで、11基分の年間予想発電量は2900万kWh。これは一般家庭6850世帯分の消費電力に相当する。運営は第3セクター(株)瀬戸ウィンドヒル。総事業費は約20億円(NEDO・資エネルギー庁/新資エネルギー事業者支援事業)。
伊方風力発電所(1700kW)
伊方地区二見の山頂で、2004年4月に運転を開始した風力発電施設。標高220mの山頂に設置されたのは定格出力850kwの風車2基で、その年間予想発電量は446万kWh。運営は伊方町。総事業費は約5億円(NEDO/地域新エネルギー導入促進事業)。
木製風車づくり
2004年、町立塩成小学校の校庭に設置された手作り木製風車。子供たちと保護者が一緒になって、杉や椰子の木を切り、花文字を削って完成させた力作。風車が町のシンボルとして受け入れられていることが分かる取り組みの一つ。
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