1.ワット神戸とは
ワット神戸は、地域と共に歩む活動を中心に、環境保全と企業経営を両立させ、地域の雇用の維持と創出、新しいビジネスの創造を図ることを目的として、2001年3月に発足した自然エネルギー推進グループ。兵庫県内の中小企業経営者が集まる「兵庫県中小企業家同友会」内にて、環境ビジネスに関心のある会員が集まった「環境ビジネス研究会」を母体としています。
ワット神戸発足の大きな転機となったのは、1999年7月に実施された環境先進国ドイツへの視察。これに参加した研究会メンバーは、様々な場面で、行政や企業、市民、NPO団体などがネットワークを形成し環境問題に取り組む様子を目の当たりにし、日本にもそうしたネットワークが必要であることを強く認識しました。そして、その取り組みへの第一歩として、2001年4月、神戸市が主催する産学官連携事業「市民発電所研究会」に参画。ここで市民発電所設置計画を進めていた地元NPOと関わりがうまれたことなどから、翌年、研究会メンバーのなかから企業として太陽光発電に取り組む意思のある33社が集まり「ワット神戸」を設立させるに至ります。
現在、ワット神戸は、多くの市民団体や行政・自治体と連携しながら、幅広く自然エネルギーの普及活動を行うNPO法人と、太陽光を中心とした自然エネルギー発電装置の設計・施工・設置を手掛ける有限会社とに分け、互いに協力しながら地域の環境保全を目指しています。
なお、名称にある“ワット”は、電力を表す単位であるW(ワット)と、みんなでワッと集まろうという意味をかけたものです。
2.新エネルギーへの取り組み
- 1999年
- 兵庫県中小企業家同友会に「環境ビジネス研究会」を立ち上げる
- ドイツ主要都市の環境への取り組みを6日間にわたり視察
- 2000年
- 神戸市の「市民発電所研究会」に参加し、行政、学者、NPO等との連携に入る
- 2001年
- 兵庫県中小企業家同友会に自然エネルギー推進グループ「ワット神戸」が発足
- 会員企業7社でコンソーシアムを組み、兵庫県の「環境型社会先導プロジェクト」の認定を受ける
- 「共同事業による太陽光発電の普及促進と雇用創出プログラム」を事業とすることを決定
- 2002年
- NPO法人CS神戸から受注した第1号の市民発電所「くるくる発電所」完成
- 「太陽光発電建設スタッフ育成講習会」始まる
- 2003年
- 「有限会社ワット神戸」「NPO法人ワット神戸」を設立
- 神戸市立神戸高専の屋上に屋上太陽光発電装置を設置
- 株式会社丸優に太陽光発電装置を設置
- 2004年
- 須磨寺 納骨堂の屋根に太陽光発電装置を設置
- 宝球寺に太陽光発電装置を設置
- 特別養護老人ホームオリンピアに太陽光発電装置を設置
- 市章山の太陽光パネルを更新基本設計
- モンゴルの現地NGOにゲル用の太陽光発電装置を設置
- 環境未来館に風力発電装置(太陽光パネルとの統合タイプ)を設置
- 2005年
- 宝泉御影プラザに太陽光発電装置を設置
- 老人ホームフォレスト垂水に太陽光発電装置を設置
- オリンピア都保育園に風力発電装置を設置
- やぶYタウンに風力発電装置(太陽光パネルとの統合タイプ)を設置
- 「兵庫地域新エネルギー(太陽光、風力発電等)、環境リサイクル関連新事業創出事業」の認定を受ける
- 「神戸ソーシャル・ベンチャー・アワード」の優秀賞を受賞
- 「地球温暖化防止活動環境大臣賞」を受賞
- 2006年
- 「自然エネルギーが地域と未来を変える」セミナーを開催
3.Back Stage Interview
企業として、NPOとして
役割分担により地域の環境保全を推進
ワット神戸 理事長 岡野重和氏
事務局長 栄 敏充氏
理事 岡田敏嗣氏
アドバイザー 岡田成久氏
●ワット神戸の3つの理念
ワット神戸の発足にあたっては、数ヶ月にわたり何度も議論しました。実は、兵庫県中小企業家同友会には「環境ビジネス研究会」の立ち上げより随分前に「地球環境問題研究会」というグループがあったのですが、環境問題に対する参加者の考え方が多様すぎて空中分解してしまった経緯があります。その失敗を繰り返さないためにも、最初の段階でグループの理念をしっかり定めておこうと考えたのです。
そこで決った大きなポイントは3つ。
まず、我々は経営者なんだから、企業として環境ビジネスの面から取り組んでいかなければいけない。環境ビジネスは簡単に成り立つものではなく、特に中小企業では難しいけれど挑戦していこうと決めました。その意思をより明確にするため、ワット神戸には、個人でボランティア的に参加したいという人には遠慮してもらい、企業として参加する意志のある会員だけを募ることにしました。
2つ目は、絞込み。太陽光も風力もバイオマスも……と欲張っていたらどっちつかずになるかもしれない。そこで、最初は太陽光発電だけに絞り、そこで実績ができ自信がついたら次へ、そこでまた自信がついたら次へ、というやり方をしていくことにしました。
3つ目は、地域における雇用の創出。自分たちだけでなく、行政を含め地域の様々な団体と連携してネットワークで事業を進めていく。ワット神戸だけで事業を進めるのはやめようということを決めました。
2003年に、ワット神戸をNPO法人と有限会社とに分けたのも、この理念に基づいた活動をよりスムーズに行うためです。ワット神戸には2001年の発足当初からたくさんの問合せをいただきましたが、どんなに時間をかけて調査したり提案書を作ってもすべてタダなんですね。お客さんになる市民団体の方々は自らが無償で活動しているのでそれが当たり前なわけですが、中小企業はそれではもちません。かといって有償にすれば、市民のせっかくの思いがカタチにできない。そこで、アドバイザーの方にボランティアで来ていただいて、住民から相談事はすべてNPO法人ワット神戸で無料で受ける。公平な立場で様々な面からアドバイスをして計画を進め、実際に設置・建設となったら実行部隊である有限会社へまわすことにしたのです。
●NPO法人と企業 2つの相乗効果
NPO法人と企業は相反するものと思われがちですが、ワット神戸の場合は、双方の取り組みがうまく結び付いていると思います。
たとえば情報の共有。NPOはいろいろな団体と連携するので、新エネルギーや省エネルギーに関する最新情報が入ってきます。そこで、NPOに集まった情報は企業へ流してもらいます。これにより、企業側が新しいニーズを見つけ、新たな事業展開に結びつけることもできる。実際に、工務店で屋上緑化事業を立ち上げたケースもあるし、制御機器メーカーが太陽光で得た電力を使った自動散水システムを開発したり、大きな工場での省エネコンサルを始めたところもあります。
また、ワット神戸で太陽光や風力の発電装置を設置させてもらった施設では、設置後に必ず、NPO主催の自然エネルギーの見学セミナーなどに使わせてもらうことにしています。だから、普通の企業なら装置を設置したらそれでオシマイですが、私たちの場合は、その後もお客さんと長いおつきあいをしていける。これも大きな特徴ですね。
最近ではワット神戸の取り組みをご存知の方も増え、そこに参加していることが社会貢献をしている証明にもなってきました。そのため、自社の名刺を出す前に、まずはワット神戸の名刺を出すというメンバーも少なくないようです(笑)。
一方、有限会社ワットにおける共同事業体でのメリットとしては、それぞれの企業の得意・不得意を組み合わせることで、新しい技術を開発したり、安いコストでサービスを提供できることが挙げられると思います。同業種間の調整は、理事会にかけて公平に判断します。たとえば太陽光パネルを設置する際、電気工事業が複数あれば、設置する装置のメーカーを見て、これまでその装置を取り付けた実績がある所を選ぶとか。予算的に厳しい仕事も結構あるので、そうした仕事が集中しないように配慮することもしています。
●木質バイオマスへの挑戦
我々としては、とにかく地元の人と関わり合いながらやっていきたい。だから、NPOでは積極的に自然エネルギーの普及啓蒙活動を行っています。「こんな企画があるけれど参加してくれない?」などと案内をいただけば100%対応していますし、学校や地域のイベントが多い10月などは毎週末の予定がびっしり埋まってしまう状態です。
なかでも未来を担う子供たちへの働きかけは重要なので、幼稚園や小学校へ出掛け、太陽光発電の手まわし発電など様々な教育キットを使ったり、クイズなどをやりながら、子供がお母さんと一緒になって環境問題を考えるような取り組みをしています。1回のイベントで理解してもらうのは難しいですが、こうしたイベントを繰り返し行うことで、少しでも環境に関心を持つ子供が増えてくれたらと願っています。
現在、こうした普及啓蒙活動はNEDOの補助金を受けながらやっていますが、もし補助金が途絶えたとしても、やめるつもりはありません。自力でやっていく、これも私たちのモットーのひとつ。今は補助金のおかげでいろいろな取り組みができていますが、なくなった場合はテーマを絞り、規模を縮小してやるだけです。
太陽光発電に絞って活動を始めたワット神戸も、今では小型風力発電や、大学や大企業と一緒に次世代の太陽光発電電池の開発なども行うようになりました。そして平成18年度は木質バイオマスに取り掛かります。木質バイオマスについては、現在までにボイラーや発電機の技術開発がほぼ完了していますが、そうした“点”はあっても、それを結びつけるネットワークができていない。原料を安定供給するためのシステムや、つくったエネルギーをどんなカタチで供給していくか、それを考えるためには様々なスキルが必要になり、いろいろな方々に協力してもらわなければいけません。でもワット神戸でなら、そうしたことができるかなと。私たちは震災で全国から支援をいただいた恩義があり、それを何らかのカタチで返したいという気持ちがある。そのためにも、今年度は木質バイオマスにしっかり取り組みたいと思います。
4.NPOと有限会社 2つのワット神戸の関係

5.主な施設の概要
くるくる発電所
ワット神戸が手掛けた第1号の太陽光発電施設。神戸市東灘区の処理環境センター敷地内に設置されたもので、太陽電池パネル20枚を並べた縦5.7×横7.5mの設備。最大発電量は5kWで一般家庭のほぼ2軒分の消費電力を発電する。「市民発電所研究会」参加団体の一つであるNPO法人コミュニティ・サポートセンター神戸(略称:CS神戸)からの受注によるもの。
モンゴル子供人権センター
モンゴルの遊牧民のゲル(テントハウス)で活用できる、持ち運び可能な太陽光発電装置(50W)を開発し、現地のNGO「子供人権センター」の管理人用ゲル(テントハウス)に寄贈した。装置は、小型の太陽光パネル、夜間に電灯をつけるための蓄電用バッテリー、蓄電する電気の量を調整するコントローラー、直流から交流に変えるインバーターなどを組み合わせたもの。
フォレスト垂水
介護付き有料老人ホーム「フォレスト垂水」のオープンに合わせ、太陽光発電システム(11KW)と、屋上緑化セダム(700平方メートル)を施工。太陽光発電システムは、建物南側の土手斜面(斜度25度)を利用して、太陽光パネル167W×65枚を設置。現発電量と総発電量を表示す表示盤の周囲にはセダムを地植えし、緑化と太陽光パネルを融合させた。
市章山
神戸の夜のシンボルである市章山の南麓にある市章の電飾。その発電装置であった太陽光発電と風力発電の20年ぶりのリニューアルに伴い、シリコン太陽電池(4×4m)2基を設置。最大発電量は3.6kW(1.8kW×2基)。
オリンピア都保育園
保育園の屋上に、鹿児島県のメーカーが開発した風速1mでも発電できるマイクロ型風力発電機を設置。最大発電量は760W。
環境未来館ビオトープ
環境学習施設「こうべ環境未来館」にある市民てづくりのビオトープ。その敷地内に、風力発電(400〜600W)と太陽光パネル(128W)を設置。
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